骨粗鬆症について
病院開設10周年を迎えて(吉田院長 H29.2.15)
厳しい寒さが続いていますが、皆様それぞれに健康に留意され人生を楽しんでいらっしゃる事を心より御祈りします。思い出すと、こんな寒い中、平成20年2月15日に私は覚悟を決めここでの独立開業をスタートしました。10年前は、“まだ”50歳だった私は両親にもらった丈夫な体と、日本海で鍛えた体に自信を持っていたので、よく患者さんが言う『人生1年とも言えないよ』との言葉が幸い(?)理解できずに歩んで来ました。
ところが、この10年間で数え切れない程、私を応援してくれた方々が亡くなられ、加えて私の心の大きな支えであった両親も他界してしまいました。開業当初からのスタッフも妻を含めて3名しか残っておらす、改めて10年の月日の長さをかみしめています。
一方、若い新しいスタッフもガンバリ屋が多く、新しい発見をさせてもらう事も多く、加えて患者さんから学ばせていただく事も、私自身の教訓となり日々感謝しております。主となる漁業を中心とし、産業が急速に衰退しているのは本当に寂しい限りです。しかし、約20年前に私がとりつかれた海、山の素晴らしさ、飲み水の美味しさ等々を心の糧とし今も当地にとどまっております。
病院とは本来“病”に苦しんでいる方々が“やむを得ず”来る所というのが原則でしょうが、当院は皆様が少しでも心の安らぎを得られる様な、別の意味合いをもった存在であれば幸いと思っております。私自身この齢になっても医師として至らない事も多々有ると思いますが、皆様の御指導を支えに微力をふりしぼって進みたいと存じています。
平成29年2月15日 吉田 顕
子供さんにおけるスポーツ外傷について(吉田院長 H29.3.4)
今回は成長期の子供さんのスポーツ外傷に触れてみます。
ここ松前町も少子化が急速に進んでおり、私が20年前この町で診療を始めた頃に比べて激減した子供さん達、次々と閉鎖される学校を見るにつけ、本当に寂しい気持ちで一杯です。その中で、スポーツによるけがに大きな変化はないようですが、それぞれの患者さんへの対応がかなり変わって来たという印象を持っています。
団体スポーツの場合はさらに難しく、人員不足で試合(この時点では本人と“親御さん”にとって最も大切なことが多く)が出来なくなるため休めない。そのため心身ともに大きな後遺症を残す事もあり、また、それがある種の“イジメ”につながってしまう可能性もあります。
また、「今の子供は骨が弱くなってしまっているのでしょうか?」ということをよく聞かれます。私の経験では、そうではなくて運動機能全体の衰え(ゲーム、スマホetc)が最大の原因と考えています。スポーツによるけが(病気も同じ事がいえますが)で最も大切な事は、その子が大人になった時にハンディを負ってしまわない様に治してあげる事を最重要課題として治療させていただいています。
結果としてその時点での決断を怖れず当院へ御相談下さい。
スポーツ障害の予防について(理学療法士 一戸 H29.4.7)
今回、コラムを担当する理学療法士の一戸です。よろしくお願いします。
前回は吉田院長よりスポーツ傷害についてのコラムを書いていただきました。そこで今回は「スポーツ傷害の予防」について考えていきたいと思っています。
スポーツ傷害はⅠ.スポーツ外傷 急激な大きな力が骨や関節、筋、靭帯に働いて、骨折、脱臼、断裂を生じる症状。Ⅱ.スポーツ障害 動作の繰り返しによって骨、筋、および靭帯を損傷する症状。 例:野球肩、テニス肘、疲労骨折などに大きく分けられます。
今回は『スポーツ外傷』の予防について考えていきます。スポーツ外傷は他者との接触によるものが多く、どんなに準備運動をしっかりとおこなってもアクシデント要素が強いため予防することは容易ではないのが現状です。そこで、自らが行っているスポーツのリスクを理解することが必要となってきます。
競技特性による分類
①コート内で敵味方が混在しているスポーツサッカーバスケットボールラグビーなど
※野球(攻守が明確に分かれており比較的接触リスクは低い)
②コートをネットや白線などでくぎり敵味方のスペースが明確なスポーツテニスバトミントン卓球など
※バレーボール、ドッチボール(味方数が多いため味方同士の接触のリスクあり)
③他者との接触がない個人の記録系スポーツ水泳陸上競技など
※中長距離走では多人数で同時に行うため陸上競技の中ではリスクが高い
競技特性による外傷リスクを考えると①>②>③ という順番となります。
自分が行っているスポーツのリスクが高い場合は、自分が怪我をおわないように注意するだけではなく、“他者を怪我させない”ような心遣いが必要となります。敵からの危険な接触を怪我なくかわすことは難しいことです。
しかし、自らが他者を怪我させないようにすることは比較的容易に行えます。勝敗が人生をわけるようなプロスポーツでは難しいことだと思います。しかし、実際に行われているスポーツの多数はレクリエーションや体力向上目的などで行われており他者に対して注意を払うことは十分に可能です。
他者を思いやることでその競技全体のリスクが大きく軽減し、結果としてスポーツ外傷を予防することにつながります。小中学生時代にスポーツにおける技術だけでなく、このような教育を十分に行っていくこともこれからはスポーツ外傷の予防方法として必要になってくると考えられます。
次回は『スポーツ障害の予防』についてという内容でコラムを担当させていただく予定です。スポーツ障害は自らの管理でリスクを減らすことは可能なので次回はより具体的な方法を記述できると考えています。
スポーツ障害について(理学療法士 一戸 H29.5.13)
前回に引き続きコラムを担当することになった理学療法士の一戸です。よろしくお願いします。
今回はスポーツ障害について考えていきたいと思います。スポーツ障害の特徴としては・突然、重篤な症状になるのではなく、軽度の痛みや違和感などの前兆症状がある・スポーツ復帰しても再発率が高いなどがあげられます。
予防としては、軽度の症状を身体の危険信号としてとらえ、競技を休息し患部を安静にすることが最も重要となります。
次に再発に関してですが、スポーツ障害の著明な例である『野球肩』を例にして考えていきたいと思います。
一般的なリハビリとしては・患部の安静による炎症の改善・肩関節(肩甲上腕関節)の動的安定性を高める肩関節のインナーマッスルトレーニング(Cuff ex)があげられます。
この後に痛みが改善し、スポーツ復帰した時に20~30球ですぐに再発するような場合は投球フォーム自体に根本的な問題があると考えられます。このような場合は投球フォームの改善が必須となってきます。
また、試合後半に痛みがでる場合や連投時に痛みがでるなどの再発パターンでは、疲労による投球フォームの乱れが原因で再発している可能性が高くなります。
このような場合は疲労に対応できるようなトレーニングが必要となります。一般的に疲労が生じると腕が下がってくる傾向があります。
これは投球時の土台となる下肢および体幹が筋疲労により能力の低下を生じてしまい、上肢に影響を及ぼすため生じる現象です。この症状の改善のためには下肢や体幹部のトレーニングが必要となってきます。
投球フォームの重要性をここまで述べてきましたが、注意点として特にある程度の実績をもっている投手に対しては、医療従事者は投球フォームの変更については慎重にならなければいけないことです。
運動学的に正しいフォームが必ずしもパフォーマンスをあげることにつがならないことを理解しないといけません。球の出所が見えにくい、タイミングがとりにくいなど打者が嫌がる個性をもっていれば、変更することによりこの個性が消失してしまう危険性があります。
痛くなく投げられるようになっても打たれやすくなっては真の意味での復帰ということにはならなくなります。パフォーマンスを維持した状態でのスポーツ復帰というレベルの高い課題を解決するためには非常に高い専門性が必要となります。
スポーツ障害は日常生活レベルで支障をなくすことは比較的容易ですが、スポーツ復帰する場合には再発する可能性が高く、より専門的な知識および技術が必要とされます。
再発を繰り返しているような方は、自らの患部だけに意識を向けるのではなく、患部に負荷を生じさせている原因を考えて患部とは他部位のトレーニングなどを積極的に取り入れていく必要性があると思われます。
骨粗鬆症の治療について(吉田院長 H29.6.17)
皆様が健康で自立された人生を楽しんでいらっしゃる事を祈ります。
近年、現在も骨粗鬆症治療の中心をなしているビスホスホネート製剤に、特に歯科治療時のリスクが報じられ疑問を持たれている方もいらっしゃると思います。
明らかなのは、この副作用とこの薬剤との決定的な因果関係は証明されておらず、もし起きるとしてもその確率は1/10000位であるということです。この確率で“宝くじ”を考えると“一億円!”当てている事でしょう。
以下、ビスホスホネート製剤のベネフィットとリスクという題で2016年に米国でまとめられた興味深いデータを報告させていただきます。
2016年に、米国臨床内分泌学会と米国内分泌学会が合同でビスホスホネート製剤による治療のベネフィットとリスクを示した骨粗鬆症治療の患者さん向けの説明ツールを発表しました。これは交通事故との対比で、骨粗鬆症治療のベネフィットとリスクを示しています。
毎年、約230万人の成人が交通事故により救急救命室へ搬送され、約200万人が骨粗鬆症が原因で骨折する。シートベルト損傷が生じるリスクや骨粗鬆症治療時に重大な副作用が発現するリスクは、ベネフィットに比べて非常に少ない(複数の情報源からのデータ)というものです。
米国では、年間約230万人の方が、交通事故により救急救命室に搬送されています。もし、シートベルトを正しく装着していれば救急救命室に搬送されるような重大な傷害や死亡リスクを約50%減少します。一方で、シートベルトを装着することによる傷害(シートベルト損傷)の可能性があります。
しかしながらこのリスクがごくわずかなものです。また、米国では年間200万人の方が、骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折を起こします。もし、ビスホスホネート製剤による治療を受けていれば、脆弱性骨折を起こすリスクは約50%減少するとされています。
一方で、顎骨壊死や非定型大腿骨骨折が発現するリスクが生じます。しかしながらこのリスクもシートベルト損傷同様にごくわずかなものです。日本ではシートベルトの装着が法律で定められていますが、シートベルト損傷のごくわずかなリスクがあるからといってシートベルトを装着したくないと思うでしょうか。
米国では、ベネフィットに比べてリスクが非常に少ないという観点から、ビスホスホネート製剤の服薬と同様という説明がなされています。皆様が世間の“雑音”に惑わされず、正しい選択をされ、健康な老年期のQOLを獲得される事を心から御祈り申し上げます。
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骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、体格の変形や痛みを伴い、さらに体の各部位の骨折を起こすことによってQOL(生活の質)は著しく低下します。このことは、健康寿命(自分の身の回りのことは自分で出来、楽しく暮らせる寿命)を短くする重篤な病気です。当院では最新の診断機器を完備し、最適の治療をめざします。
当院における骨粗鬆症の診断、治療と予防について
<骨粗鬆症の診断>
骨粗鬆症の診断は、変形性関節症、肩関節周囲炎、腰が痛い、足が痺れるといった一見主訴とは違うような患者様に対しても60歳を目安に拒否される患者様を除いて骨密度を測定しています。また、X線の撮り方ですが、普通は第3腰椎を中心に腰椎の4方向を撮りますが、それでは第1腰椎を撮影出来ずに圧迫骨折を見逃してしまいます。当院では55歳以上の方には第8胸椎と第3腰椎を中心に全ての撮影し骨粗鬆症を見逃さないようにしています。
<骨粗鬆症検査>
・問診 ・X線撮影 ・骨密度測定:DXA ・骨代謝マーカー ・MRI検査 など |
<骨粗鬆症の予防と治療>
骨粗鬆症は予防すべき疾患だと考えています。特に自覚症状がない、閉経前後の骨密度が急速に低下する時期が重要と考えており、さらなる骨密度の低下を防ぐ必要があります。「原発性骨粗鬆症の診断基準・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年度版」では運動や食事療法が推奨されてますが、実際されだけでは骨密度は低下し続けます。骨粗鬆症の治療と予防には、ビスフォスフォネート製剤が有効だと考えています。
骨粗鬆症検査について
<X線検査>
骨粗鬆症を起こすことが多い脊椎のX線検査が基本になります。椎体の骨梁や骨陰影濃度で骨量の減少の程度や椎体の骨折の有無を判定します。また、骨が溶けたように見えるがんの転移や高齢者に多い「変形性脊椎症」という骨の病気は骨粗鬆症と症状も似ていることもあり、どちらの病気かを詳しく見ていきます。
ただ、このX線検査では骨量を数値で知ることはできませんので、骨量計測検査を併せて行うことが、必要となります。
<骨量計測装置>
・DXA(デキサ法)
全身の骨量を正確に知る方法にデキサ法があります。性質の違う微量の二種類のX線を出して、全身の骨、あるいは腰椎、大腿骨など任意の部位の骨量を測定します。骨量の測定法では、デキサ法が最も精度が高いと言われています。しかしデキサ法の装置は、大型で費用がかかることなどから限られた医療施設にしか設置されていないのが現状ですが、精密検査には欠かせない装置といえます。
・MD法
簡便なレントゲン撮影法で、アルミ階段の板と一緒に両手の骨を撮影し、X線写真上からコンピューターを使って骨量を計測する方法で、正確さはデキサ法に劣るが、検査は短時間ですむという利点があり、集団検診で骨量が異常に低い人を見つけ出すには、MD法が有用という意見もある。ただし、骨粗鬆症にとって重要な「脊椎」や「大腿骨」など全身の骨量を計測できないのが、欠点である。
・QCT法
CT装置を用いて、脊椎の骨量を測る方法です。この方法は脊椎の骨量を直接測れるという利点があります。しかしデキサ法に比べて放射線を浴びる量が多く、また骨量検診のためだけにCTを使用することには難しい面もある。
・超音波法
踵の骨に超音波を当て、その骨の伝わる速度と減衰率を測って、骨量を求めるという検査法です。腹部超音波に使われるよりも低周波のものを使用するので、一番安全な骨量測定法と言えます。ただし、超音波は骨の構造にも左右されると考えられ、骨量だけを正確に測れているかどうかはまだ解明されていません。治療経過を追うような詳しい診断には今のところ不向きです。
<骨代謝マーカー>
骨にはカルシウム以外にもいろいろな成分が含まれています。骨の代謝により破壊と再生を繰り返しています。古くなった骨を破骨細胞がどんどん溶かして破壊すると、骨芽細胞が破壊された部分に新しい骨を形成して元の形に修復していきます。
骨の破壊と再生を繰り返す過程で、尿や血液にいろいろな成分がでてくるようになります。この出てきた成分の種類と量を調べることによって、骨粗鬆症になる可能性の予測ができるようになりました。この成分を骨代謝マーカーといい、今注目を集めている新検査法です。
<当院の骨量計測装置>
当院の骨量計測装置はアメリカ、GE社製の「X線骨密度測定装置 PRODIGY」で、測定方式はデキサ(DXA)法です。
<PRODIGYの特徴は>
1きわめて正確に骨量を測定することができます。
2放射線を浴びる量は、通常のエックス線撮影法の1/10程度です。
3全身の骨あるいは腰椎、大腿骨など、任意の領域を自由に測定できます。
4測定時間が1か所であれば1分弱、全身の骨なら5分くらいと、検査時間が短い。
5検査終了後、すぐに結果がでます。
<検査を受ける方へ>
(1)ルーチンで腰椎と大腿骨の二か所の骨量を測定します。
(2)衣類にボタン、金属類があれば正確な測定はできませんので、検査衣に着替えて検査を始めます。
(3)検査台に仰向けに寝ていただきます。何の苦痛もなく3分ほどで検査が終了します。
検査終了後、瞬時に数値化し、骨量が年齢相応の標準値と比較して、どの程度なのか、グラフで示してくれます。