骨粗鬆症について
変形性膝関節症における運動療法について (理学療法士 一戸 H27.11.14)
「変形性膝関節症における運動慮法について」というテーマでコラムを担当することになった理学療法士の一戸です。
今回は変形性膝関節症の運動療法の中で最も一般的な運動である大腿四頭筋(太ももの前面の筋)筋力強化exについて話をしていきたいと思っています。
運動療法の教科書においても、変形性膝関節症に対する運動として椅子に座り、足首に重りをつけた状態から膝をゆっくりと曲げ伸ばしする運動が推奨されています。
テレビなどで紹介されることが多い運動なのでご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、これが大腿四頭筋筋力強化exの代表的な方法です。
しかし、私の個人的な経験ですが、臨床においてこの運動の効果で症状が改善した症例は一つも経験したことがありません。
新人の頃はこの運動を行えば膝の痛みが改善すると思い、患者さんに熱心に指導していたのですが、効果が無く非常に不評でした。当時は教科書にも書いてある代表的な正しいとされている運動を行っているのに効果がでないのが不思議でした。
しかし、現在の知識レベルで考えるとごく当然のことでした。いくらこの運動を行って膝を伸ばす筋力を強化しても痛みが歩いている時に生じるのであれば、実際に歩いている時にその筋力が有効に発揮されなければ全く無意味になります。
大腿四頭筋は歩いている時は、膝蓋骨(膝のお皿)が進行方向正面を向いていなければ、筋走行の関係上うまく筋力が発揮できないようになっています。
変形性膝関節症で膝が曲がってしまい膝蓋骨が外側を向いてしまう状態ではいくら大腿四頭筋の筋力強化運動を行っても歩いている時に筋力は発揮しづらいため運動の効果は期待できなくなります。
大腿四頭筋をうまく使用するためには膝蓋骨が進行方向正面を向くように歩くことが最も重要です。
そのための有効な方法として
①インソール(足底板)の使用
O脚の形状自体に対するアプローチ方法。
歩いている時に膝蓋骨が正面を向くように調整する。
②体幹筋と股関節内旋筋の筋力強化
膝関節以外の他部位からのアプローチ方法
立位で背中が曲がっていると膝も連動して曲がってしまうため姿勢を正すために必要となる。
③歩行時につま先が真っ直ぐ進行方向を向いて歩くように注意する
歩き方自体に対する意識付けのアプローチ方法
人間は自分に身体の認識があいまいで末梢部(指先、足先)しか、意識して上手に使用することができないようになっています。試しに肘で目標物に触るような動作をしてください。指先で触れるよりもはるかに難しく、力の配分やスピードも上手に調整できないことに気づくと思います。
そこで歩行時に膝蓋骨を意識して歩くよりははるかに足先を進行方向に向けるように意識してする方が有効な方法となります。
①~③の一つ一つでは効果が十分ではありませんが、これらの方法を組み合わせることによって変形性膝関節症に対して有用な方法となると考えています。
この後で、一般的な大腿四頭筋の筋力強化運動を行うとさらに有用になりますが、単独の運動では効果を発揮することは難しいと考えられます。
変形性膝関節症における運動療法②(H27.12 理学療法士 一戸)
前回に引き続き、コラムを担当することになった理学療法士の一戸です。よろしく御願いします。
前回は、変形性膝関節症の保存療法についての話でしたが、今回は現在数多く行われている人工膝関節全置換術 total knee arthroplasty(以下TKA)後の運動療法について取り上げてようと思います。
私が今まで担当した変形性膝関節症を有している多くの患者さんから「この膝は手術したらすっきり治るのかな」と尋ねられることがありました。
テレビなどを見てTKAをおこなえば、どこも悪いところのない若い頃の膝のようになると思われている方がいらっしゃるようです。
そのような問いを投げかけられた時は、痛みが強くて日常生活に大きな支障がでている方には痛みが軽減し歩けるようになるのでとても意味ある手術だけど、若い時の膝に戻せるわけではないから何でもできるようになるわけではないと説明しています。
一般的なTKA術後では膝関節において可動域制限は残存してしまいます。膝関節の曲げる角度の制限などはよく知られていることで、和式の生活や畑仕事などを行う場合は様々な工夫が必要になります。
又、一般的な人工膝関節は一軸構造(曲げる←→伸ばす)であるため、生体の膝が有している『捻れ』が無くなってしまいます。
人間の動作は様々な捻れの複合運動であり、歩行において膝関節の捻れがなくなると歩幅も小さくなりスムーズに歩けずにロボットのような歩行になってしまう傾向があります。
活動性の高い方は膝の捻れ部分を足関節、股関節、腰部などで代償して補っていますが、徐々に代償しきれなくなりこれらの部位が悪化していくことが数多く見受けられます。
特に実際に地面に接して反発力を得ている足関節、足部、足趾には可動域制限、筋力低下を有している方が数多くいらっしゃいます。
TKA後の運動療法において、特に歩行に対して効果を発揮するためには足関節がメインをなります。膝関節自体は手術にてしっかりと整備されており、運動療法で改善できる部分はごくわずかです。
それよりも膝を代償して負荷のかかっている他部位、特に足関節に対して実施することで運動療法の効果がより発揮されます。
TKA後の自主トレーニングとして有効な運動としては
①踵を自らの手でつかんでグルグルと回す運動
踵がつかめない方は足の指だけでも効果は期待できます。
足趾をつかめない方は足首をグルグル回すことも有効です。
足底を地面にしっかり接地して地面を蹴るための準備動作として必要な動きです。
②つま先立ち運動
壁の前に立ち両手を壁につけて安定した状態から踵を浮かし、つま先立ちになる運動です。これは歩行時に地面を蹴るための練習となります。
このような簡単な運動を日々行うことにより、手術を行った膝を代償する足関節、足部、足趾を整えかつ鍛えることができます。
手術後数年経過している方でも現状に諦めることなく、日々簡単な運動を継続することにより生活関連動作の改善がはかれると考えています。
骨粗鬆症治療における間歇的大量投与への警鐘(吉田院長 H28.1.7)
ビスフォスフォネート(BP)の登場により、骨粗鬆症の治療体系は大きく進化し、連日内服から月に1回の内服・注射、さらには抗RANKL抗体として6ヶ月に1回の製剤が加わった。
患者さんにとって将来の骨折予防・QOL改善等のtargetをより高めていけるEBMは素晴しい。しかし、その一方で、それらの薬剤を間歇的に大量投与する事の安全性に本当に問題はないのか、著者は大いなる疑問を持たざるを得ない。
特に近年はその投与間隔が、利便性(?)のみを追求しより長くなる傾向が見られる。大量に一度で投与された薬剤が、体内で長期間均等に分配されて作用するとは到底考え難い。加えてこれらの薬剤の体内動態(骨代謝への影響)に関する情報は主に海外からのものであり、我が国特有の高精度の骨代謝マーカーでの検討が充分にされてないまま国内に導入されている感がある。
著者は、このBPの月1回内服製剤使用時から、重篤で様々の症状、いわゆるAPR(Acute Phase Reaction)を数多く経験してきた。しかし、APRに関しては、2013年米国骨代謝学会(ASBMR)、2014年日本骨粗鬆症学会において、やっと本格的な議論がされ始めたのが、現状である。さらに、BPによる顎骨壊死の存在が否定しきれていない現在、歯科・口腔外科との溝を埋めない限り、1度この手の製剤を使用すると抜歯等の処置において休薬期間を作ることは不可能であり、患者側に著しい不利益を与える結果となる。
熟考を願ってやまない。
医療社団法人 よしだ整形外科 吉田 顕
新年の御挨拶(吉田院長 H28.1.4)
患者様には、平成28年の新年をより良い年にと願いお迎えの事と存じます。心からお慶びを申し上げます。
昨年は日本ばかりか世界中で様々な悲しい出来事が多く起こりました。ここ松前でも海の空前の不漁に触れるにつけ、私が約20年前に様々の夢の様な体験をさせてもらったことが想い出され、本当につらい日々です。
この様な中でも我々“よしだ整形外科職員一同”は、皆様方がより健康で生きていて楽しいと思える機会が少しでも多く訪れます様努力してまいる覚悟です。
どうぞよろしく御願い申し上げます。
腰部脊柱管狭窄症について(吉田院長 H28.2.6)
高齢化の進展に伴い、我が国における腰部脊柱管狭窄症の患者数は急速に増加傾向にあります。ある病院では腰椎疾患で入院する患者の8割程度は、腰部脊柱管狭窄症を有しているとも言われています。
外来で皆様の診察にあたっているとこの病気の増加を実感します。
腰部脊柱管狭窄症は腰椎の椎間板と椎間関節の変性を基盤として神経の通路である脊柱管や椎間孔が狭小化することで、特有の症状を呈する症候群です。
私が熱いファンである“E.YAZAWA”氏もこの病気で悩んでいるとの事。
皆様こんな症状はありませんか?
しばらく歩いたり、立ったりしていると、足や腰に痛み・しびれが生じるが腰を曲げて休むと楽になる。
これを間欠性破行といいます。
さらに
・腰が痛む
・足が痛む・しびれる
※しゃく熱感、冷感、ムズムズ感などがあらわれる場合もあります
・足の力が出しにくい
・お尻や会陰部にピリピリした異常な感覚がある
これらは「腰部脊柱管狭窄症」の症状の可能性大です。
さらなる特徴は
・高齢者に発症が多い
・背中を反らせると痛み・しびれが強くなる
・前かがみになったり自転車に乗ったりすると痛み・しびれが軽くなる 等が有ります。
診断は、症状、レントゲンのほかに“MRI”が必須であり、これ無しには他の疾患(椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、ガンの転移など)と区別がつきません。
治療はまず保存的に
①薬剤
・血管を広げる薬(プロスタグランジンE1誘導体)
→脊柱管の中を通る神経の血流を改善してしびれを和らげ、歩きやすくする。
・痛みを抑える薬(消炎鎮痛剤)→足や腰の痛みを抑える。
・ビタミン剤→主にしびれを抑えるために使用する。
②理学療法
③ブロック療法
が効果的ですが、症状が良くならない場合は手術にふみ切らざるを得ない場合もあります。
皆様、まず正しい診断を受け一日も早く回復されます様、当院を受診してください。
脊柱管狭窄症の理学療法について(理学療法士 一戸 H28.3.4)
こんにちは、よしだ整形外科に勤務している理学療法士の一戸です。
前回の吉田院長の『脊柱管狭窄症について』という内容に引き続き今回は『脊柱管狭窄症の理学療法について』というテーマでコラムを担当させていただきます。
脊柱管狭窄症で理学療法の処方がでた患者さんから「リハビリをしたら腰の狭くなった部分が治るのか?」と質問されることがよくあります。
この様な時は、「腰の狭くなった部分を広くすることは手術じゃないから無理ですが、痛みなどの症状は改善することはありますよ」と説明させていただいています。
同じ疾患名であっても病態は様々なので改善度は異なりますが、比較的改善度の高い方と改善の難しい方の傾向は存在します。
脊柱管狭窄症の方は腰を曲げて休むと症状が軽減するという傾向があります。
これはこの姿勢になると神経圧迫が軽減されることによって生じる現象です。
この現象を利用して姿勢を改善することにより脊柱管狭窄症による神経症状を軽減させることが可能な場合があります。
効果の高い例としては、腰椎過前彎傾向の姿勢(お腹を前に突き出して腰が後ろに反り返っている姿勢)の方です。
この場合、骨盤の動きが改善し腹筋群に収縮が入りやすくなると、腰椎の過度な前彎が解消します。姿勢が変化することにより神経系への圧迫が軽減し、しびれ、筋力低下、痛みなどの神経症状が改善する可能性があります。
逆に改善の難しい例としては、本来は楽な姿勢であるはずの腰を曲げている状態で強い症状が常にでている方々です。
このような場合は下肢のしびれ、下肢の筋力低下などの神経症状由来のものは改善が難しいのですが、痛みに関しては改善できる部分もあります。
痛みのすべてが脊柱管狭窄症による神経圧迫によって生じているわけではなく、姿勢不良によって生じる背筋群の筋原性腰痛の可能性もあります。
そこで背筋群に対して筋力強化運動や物理療法を併用することにより疼痛が軽減する場合もあります。
当然のことですが、理学療法によってすべての症状が改善できるということはありません。
そのなかで患者さんの病態にあった最良の結果を得られるように日々取りくんでおります。
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骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、体格の変形や痛みを伴い、さらに体の各部位の骨折を起こすことによってQOL(生活の質)は著しく低下します。このことは、健康寿命(自分の身の回りのことは自分で出来、楽しく暮らせる寿命)を短くする重篤な病気です。当院では最新の診断機器を完備し、最適の治療をめざします。
当院における骨粗鬆症の診断、治療と予防について
<骨粗鬆症の診断>
骨粗鬆症の診断は、変形性関節症、肩関節周囲炎、腰が痛い、足が痺れるといった一見主訴とは違うような患者様に対しても60歳を目安に拒否される患者様を除いて骨密度を測定しています。また、X線の撮り方ですが、普通は第3腰椎を中心に腰椎の4方向を撮りますが、それでは第1腰椎を撮影出来ずに圧迫骨折を見逃してしまいます。当院では55歳以上の方には第8胸椎と第3腰椎を中心に全ての撮影し骨粗鬆症を見逃さないようにしています。
<骨粗鬆症検査>
・問診 ・X線撮影 ・骨密度測定:DXA ・骨代謝マーカー ・MRI検査 など |
<骨粗鬆症の予防と治療>
骨粗鬆症は予防すべき疾患だと考えています。特に自覚症状がない、閉経前後の骨密度が急速に低下する時期が重要と考えており、さらなる骨密度の低下を防ぐ必要があります。「原発性骨粗鬆症の診断基準・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年度版」では運動や食事療法が推奨されてますが、実際されだけでは骨密度は低下し続けます。骨粗鬆症の治療と予防には、ビスフォスフォネート製剤が有効だと考えています。
骨粗鬆症検査について
<X線検査>
骨粗鬆症を起こすことが多い脊椎のX線検査が基本になります。椎体の骨梁や骨陰影濃度で骨量の減少の程度や椎体の骨折の有無を判定します。また、骨が溶けたように見えるがんの転移や高齢者に多い「変形性脊椎症」という骨の病気は骨粗鬆症と症状も似ていることもあり、どちらの病気かを詳しく見ていきます。
ただ、このX線検査では骨量を数値で知ることはできませんので、骨量計測検査を併せて行うことが、必要となります。
<骨量計測装置>
・DXA(デキサ法)
全身の骨量を正確に知る方法にデキサ法があります。性質の違う微量の二種類のX線を出して、全身の骨、あるいは腰椎、大腿骨など任意の部位の骨量を測定します。骨量の測定法では、デキサ法が最も精度が高いと言われています。しかしデキサ法の装置は、大型で費用がかかることなどから限られた医療施設にしか設置されていないのが現状ですが、精密検査には欠かせない装置といえます。
・MD法
簡便なレントゲン撮影法で、アルミ階段の板と一緒に両手の骨を撮影し、X線写真上からコンピューターを使って骨量を計測する方法で、正確さはデキサ法に劣るが、検査は短時間ですむという利点があり、集団検診で骨量が異常に低い人を見つけ出すには、MD法が有用という意見もある。ただし、骨粗鬆症にとって重要な「脊椎」や「大腿骨」など全身の骨量を計測できないのが、欠点である。
・QCT法
CT装置を用いて、脊椎の骨量を測る方法です。この方法は脊椎の骨量を直接測れるという利点があります。しかしデキサ法に比べて放射線を浴びる量が多く、また骨量検診のためだけにCTを使用することには難しい面もある。
・超音波法
踵の骨に超音波を当て、その骨の伝わる速度と減衰率を測って、骨量を求めるという検査法です。腹部超音波に使われるよりも低周波のものを使用するので、一番安全な骨量測定法と言えます。ただし、超音波は骨の構造にも左右されると考えられ、骨量だけを正確に測れているかどうかはまだ解明されていません。治療経過を追うような詳しい診断には今のところ不向きです。
<骨代謝マーカー>
骨にはカルシウム以外にもいろいろな成分が含まれています。骨の代謝により破壊と再生を繰り返しています。古くなった骨を破骨細胞がどんどん溶かして破壊すると、骨芽細胞が破壊された部分に新しい骨を形成して元の形に修復していきます。
骨の破壊と再生を繰り返す過程で、尿や血液にいろいろな成分がでてくるようになります。この出てきた成分の種類と量を調べることによって、骨粗鬆症になる可能性の予測ができるようになりました。この成分を骨代謝マーカーといい、今注目を集めている新検査法です。
<当院の骨量計測装置>
当院の骨量計測装置はアメリカ、GE社製の「X線骨密度測定装置 PRODIGY」で、測定方式はデキサ(DXA)法です。
<PRODIGYの特徴は>
1きわめて正確に骨量を測定することができます。
2放射線を浴びる量は、通常のエックス線撮影法の1/10程度です。
3全身の骨あるいは腰椎、大腿骨など、任意の領域を自由に測定できます。
4測定時間が1か所であれば1分弱、全身の骨なら5分くらいと、検査時間が短い。
5検査終了後、すぐに結果がでます。
<検査を受ける方へ>
(1)ルーチンで腰椎と大腿骨の二か所の骨量を測定します。
(2)衣類にボタン、金属類があれば正確な測定はできませんので、検査衣に着替えて検査を始めます。
(3)検査台に仰向けに寝ていただきます。何の苦痛もなく3分ほどで検査が終了します。
検査終了後、瞬時に数値化し、骨量が年齢相応の標準値と比較して、どの程度なのか、グラフで示してくれます。