骨粗鬆症について
第1回 骨コラム連載開始のごあいさつ
皆様はじめまして。院長の吉田です。今回初めて骨コラムをつづらせていただきますので、総論的な話をさせていただきます。日本は本格的な超高齢化社会を迎えそれとともにますます皆様の老後(余生)は不透明なものとなってきたという感じがします。このような環境下においては、最も大切な目標の一つとして、皆様の体の健康度の質の向上および維持が上げられる事は明らかでしょう。すべての命には寿命が有り、いつの日か終焉を迎えなければなりません。その時がくるまで少しでも長く健やかな体と心を持って、楽しく老後を生き抜くために・・・。ここで、人間の体の柱である骨(骨格)を健やかに保って行くことがきわめて重要と考えられます。
少しでも長く自らの脚で立ち歩き、バランスの安定した体の柱を維持するべく、私どもは精一杯の診療に心がけております。
第2回 骨コラム(H21.12.16)
加齢とともに骨が弱って体中の骨が骨折し易くなる骨粗鬆症。最近の研究では何と! 骨密度が正常範囲あっても決してまれではなく起こることが解明されています。すなわち、骨の強さ(骨密度)には、骨の密度のみならず、骨の質(骨質)が大きくかかわっているのです。東京慈恵医大の斉藤 充 先生の最新の研究によると、骨を鉄筋コンクリートに例えると、体積の半分はコンクリートにあたるカルシウム分であるが、他の強度を規定する、すなわち鉄筋部分はコラーゲンである。このコラーゲン同士を結合する架橋(はり)の性質が大きく関与する。この架橋には「善玉」と「悪玉」が存在し、善玉は規則正しくコラーゲン同士を連結し適度な弾力を保つのに対し、悪玉はバラバラに結ぎ骨強度は低下する。当院でもこの点に注目し「骨密度正常でも留意が必要」との新概念に基づいて治療方法を考慮しています。
第3回 骨コラム(H22.1.13)
骨粗鬆症は早期からの予防が不可欠であることは漠然と、かなりの方々に知られるようになってきたようです。
しかし、その方法論が多くのメディア等に惑わされて正しい方向へ向かっていない様に思われます。
現在、女性の閉経の平均年齢は約50歳とされていますが、実はこの閉経≒エストロゲン(女性ホルモン)の減少スピードが最も急速なのは、まさに50歳前後であり、この時期にある程度の運命が決定されてしまっている事実を、自覚していらっしゃる方は皆無といってもよいでしょう。多くの皆様は『私は好き嫌いなく食べて来たし、程度な運動もしてきたのにまさか・・・?』と、外来でよくあるケースです。骨粗鬆症は、動脈硬化症、糖尿病等と同じく代謝異常をきたす疾患であり“老化現象”とは必ずしも同じではありません。
閉経前後の女性、糖尿病、関節リウマチ、動脈硬化性疾患をお持ちの方々に是非検診を受けられる様お勧めいたします。
第4回 骨コラム 『骨の強度の評価(診断)法の最前線』 (H22.2.17)
皆様の中にも、何らかの方法でどこかの病院等で骨密度を測った事がある方もいらっしゃるかと思います。骨密度測定は20年前より我が国でも多くの病院において実に様々な方法での測定が行われています。
どんな方法にせよ、まず御自身の骨密度を測定するという第一歩を踏み出される事は有意義です。しかし、その測定方法によっては、正しい診断に結びついていない例がかなり多く存在します。
例をあげると、いまだに多くの病院で行われている、両手のレントゲンを用いた方法がありますが、少なくともこれだけをもって正しい骨粗鬆症の診断ができない事は、近年では明らかになっています。現在は、全身の測定が可能な二重X線(DXA)法による背骨と大腿骨近位部での測定値を用いる事が、ほぼ必須といってもよいでしょう。
当院では、現時点で最新のGE社製DXA装置を備え、より正確な骨密度測定を実現するべく取り組んでおり、実際に開業から2年間で、のべ数千人の方が検査を受けていらっしゃいます。
より正確な骨密度測定はDXA装置を備えた当院へ是非いらしてください。
第5回 骨コラム 『骨粗鬆症と胃・十二指腸病変』 (H22.3.17)
骨粗鬆症の患者様の中でも特に重症な方々で、背中が著しく曲がり、背中から腰にかけての痛みや重苦しさとともに、胸やけ、上腹部痛を訴えられる方々が多くいらっしゃいます。原因は実は骨粗鬆症の薬剤による副作用ではない事が多く、曲がってしまった背骨に圧迫されるための『逆流性食道炎』や『食道裂孔ヘルニア』である事が解明されています。失礼になるかとも思いますが、消化器を専門とされる先生で、この事実を勉強されている方がきわめて少ない様です。これらの先生は、骨粗鬆症の薬剤による胃腸障害と決めつけて中止を勧め、結果として骨折からの寝たきり防止への道が断たれてしまっています。
高齢の方々の自覚症状の中で骨・関節疾患は非常に多いのです。また、平均寿命に加えて健康寿命の延長も重要です。介護を要する原因の最上位には骨折・転倒が含まれており、その原因となる骨粗鬆症の治療介入は健康寿命の延長に不可欠であることは明白な事実なのです。
皆様、いかに優れた薬も飲んでいただかなければ効果はでません。しっかり服薬し、同時に胸やけ等の加療も考えましょう。
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骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、体格の変形や痛みを伴い、さらに体の各部位の骨折を起こすことによってQOL(生活の質)は著しく低下します。このことは、健康寿命(自分の身の回りのことは自分で出来、楽しく暮らせる寿命)を短くする重篤な病気です。当院では最新の診断機器を完備し、最適の治療をめざします。
当院における骨粗鬆症の診断、治療と予防について
<骨粗鬆症の診断>
骨粗鬆症の診断は、変形性関節症、肩関節周囲炎、腰が痛い、足が痺れるといった一見主訴とは違うような患者様に対しても60歳を目安に拒否される患者様を除いて骨密度を測定しています。また、X線の撮り方ですが、普通は第3腰椎を中心に腰椎の4方向を撮りますが、それでは第1腰椎を撮影出来ずに圧迫骨折を見逃してしまいます。当院では55歳以上の方には第8胸椎と第3腰椎を中心に全ての撮影し骨粗鬆症を見逃さないようにしています。
<骨粗鬆症検査>
・問診 ・X線撮影 ・骨密度測定:DXA ・骨代謝マーカー ・MRI検査 など |
<骨粗鬆症の予防と治療>
骨粗鬆症は予防すべき疾患だと考えています。特に自覚症状がない、閉経前後の骨密度が急速に低下する時期が重要と考えており、さらなる骨密度の低下を防ぐ必要があります。「原発性骨粗鬆症の診断基準・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年度版」では運動や食事療法が推奨されてますが、実際されだけでは骨密度は低下し続けます。骨粗鬆症の治療と予防には、ビスフォスフォネート製剤が有効だと考えています。
骨粗鬆症検査について
<X線検査>
骨粗鬆症を起こすことが多い脊椎のX線検査が基本になります。椎体の骨梁や骨陰影濃度で骨量の減少の程度や椎体の骨折の有無を判定します。また、骨が溶けたように見えるがんの転移や高齢者に多い「変形性脊椎症」という骨の病気は骨粗鬆症と症状も似ていることもあり、どちらの病気かを詳しく見ていきます。
ただ、このX線検査では骨量を数値で知ることはできませんので、骨量計測検査を併せて行うことが、必要となります。
<骨量計測装置>
・DXA(デキサ法)
全身の骨量を正確に知る方法にデキサ法があります。性質の違う微量の二種類のX線を出して、全身の骨、あるいは腰椎、大腿骨など任意の部位の骨量を測定します。骨量の測定法では、デキサ法が最も精度が高いと言われています。しかしデキサ法の装置は、大型で費用がかかることなどから限られた医療施設にしか設置されていないのが現状ですが、精密検査には欠かせない装置といえます。
・MD法
簡便なレントゲン撮影法で、アルミ階段の板と一緒に両手の骨を撮影し、X線写真上からコンピューターを使って骨量を計測する方法で、正確さはデキサ法に劣るが、検査は短時間ですむという利点があり、集団検診で骨量が異常に低い人を見つけ出すには、MD法が有用という意見もある。ただし、骨粗鬆症にとって重要な「脊椎」や「大腿骨」など全身の骨量を計測できないのが、欠点である。
・QCT法
CT装置を用いて、脊椎の骨量を測る方法です。この方法は脊椎の骨量を直接測れるという利点があります。しかしデキサ法に比べて放射線を浴びる量が多く、また骨量検診のためだけにCTを使用することには難しい面もある。
・超音波法
踵の骨に超音波を当て、その骨の伝わる速度と減衰率を測って、骨量を求めるという検査法です。腹部超音波に使われるよりも低周波のものを使用するので、一番安全な骨量測定法と言えます。ただし、超音波は骨の構造にも左右されると考えられ、骨量だけを正確に測れているかどうかはまだ解明されていません。治療経過を追うような詳しい診断には今のところ不向きです。
<骨代謝マーカー>
骨にはカルシウム以外にもいろいろな成分が含まれています。骨の代謝により破壊と再生を繰り返しています。古くなった骨を破骨細胞がどんどん溶かして破壊すると、骨芽細胞が破壊された部分に新しい骨を形成して元の形に修復していきます。
骨の破壊と再生を繰り返す過程で、尿や血液にいろいろな成分がでてくるようになります。この出てきた成分の種類と量を調べることによって、骨粗鬆症になる可能性の予測ができるようになりました。この成分を骨代謝マーカーといい、今注目を集めている新検査法です。
<当院の骨量計測装置>
当院の骨量計測装置はアメリカ、GE社製の「X線骨密度測定装置 PRODIGY」で、測定方式はデキサ(DXA)法です。
<PRODIGYの特徴は>
1きわめて正確に骨量を測定することができます。
2放射線を浴びる量は、通常のエックス線撮影法の1/10程度です。
3全身の骨あるいは腰椎、大腿骨など、任意の領域を自由に測定できます。
4測定時間が1か所であれば1分弱、全身の骨なら5分くらいと、検査時間が短い。
5検査終了後、すぐに結果がでます。
<検査を受ける方へ>
(1)ルーチンで腰椎と大腿骨の二か所の骨量を測定します。
(2)衣類にボタン、金属類があれば正確な測定はできませんので、検査衣に着替えて検査を始めます。
(3)検査台に仰向けに寝ていただきます。何の苦痛もなく3分ほどで検査が終了します。
検査終了後、瞬時に数値化し、骨量が年齢相応の標準値と比較して、どの程度なのか、グラフで示してくれます。